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【レビュー・感想】今更だけど、DIR EN GREY 1つの転換期 VULGARを振り返る

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「VULGAR」の生誕の歴史

こちらの記事

DIR EN GREY アルバムの変遷と新作【人間を被る】の感想 - からすぅ100%のブログ

でも少し語っていますが

DIR EN GREY の歴史の中で、現在のバンドの基盤を形成し、その後の方向性を示したアルバムは間違いなく「VALGAR」でしょう。

 

「VALGAR」からバンドとしてはよりヘヴィかつダークに進化(深化)を遂げて行きます。バンドの進化(深化)に合わせてか、本作より「UROBOROS」までアルバムジャケットは黒を基調に作成されています。(DUM SPIRO SPEROあたりからアルバムジャケットに緑が入り、ARCHEでは青、The Insulated Worldでは虹色に変化しています。)

 

VALGAR以前のアルバムを顧みると、1thアルバム「GAUZE」はインディーズ活動の集大成でありながらも、そこにYOSHIKIさんを含む音楽業界人がDIR EN GREYを世に放つ為、良くも悪くも様々な人の手が加わった作品となっています。

 

一方、色々な人の干渉を受けず、DIR EN GREY本来の世界観をより表現するために生み出されたのが2thアルバム「MACABRE」であり、その後、演奏、ライブに特化した3thアルバム「鬼葬」、ミニアルバム「six Ugly」が生み出されました。

 

これらの進化の過程でヘヴィロック指向を深めて行き、かつ、メンバーがDIR EN GREYを見つめ直した結果として、これまでの集大成として生み出されたのが4thアルバム「VULGAR」となっています。

 

「VULGAR」の音楽性

本作品がバンドの転換期と言われる所以に、バンド自体が重心の低いダークな方向性に進むため、様々な分野の音楽要素を盛り込んでいる事が挙げられます。

具体的にはヘヴィロックを基盤に、エクスペリメンタル・メタル、オルタナティブ・メタル、ニュー・メタル、ゴシックメタル、パンクが盛り込まれています。

 

エクスペリメンタル・メタルとかなんやねん、と思う方も多いと思うので、上記の音楽ジャンルについて、簡単にご説明させていただきます。(Wikipedia参考です。)

■エクスペリメンタル・メタル

ジャズポップスクラシックロック、テクノ、ヒップホップハウスグラインドコアレゲエカントリー等の多ジャンルとデスメタルを融合するというもので、別々の曲をツギハギにつなげたような感覚のアップダウンテンポが激しい曲が多い。機械音、効果音で演奏されることも特徴のひとつである。歌唱法としてはデスボイスデスシャウトを用いることも多い。

 

■オルタナティブ・メタル

機械的でインダストリアルなビートによる簡潔で速い曲を作るようになっていった[5]。ヘヴィメタルの伝統的要素である様式美やドラマ性は重視せず、歌メロやグルーヴを強調するバンドが多い。また、伝統的なヘヴィメタルの花形であったギターソロを弾かない場合が多く見受けられる。

 

■ニュー・メタル

グランジオルタナティヴ・ロックの影響と1990年代初期のヒップホップエレクトロ、伝統的なヘヴィメタル(特にスラッシュメタル)の影響が融合している。

 

■ゴシックメタル

ヘヴィメタルのサブジャンルの一つ。ヘヴィメタルの激しさとゴシック・ロック耽美性を併せ持つ。

 

■パンク

高価な機材を使ったり、早弾きなどの技巧を競っていた当時のハードロックプログレッシブ・ロック・シーンに対する反発により生まれた。簡素なロックンロールへの回帰を志向し、あえてスリーコード中心の簡潔でミニマルなスタイルをとった。

 

要するに、重心の低いジャンルの音楽を基盤に、様々な要素を盛り込んだ楽曲が多いという事になります。アルバム制作の段階で、キャッチーなものや爽やかなものも生まれたそうですが、DIR EN GREY の方向性を示すため、敢えてそれらの楽曲は外したとの事です。

 

これらの音楽的要素に和のテイストや日本人としての音楽性を加える事により、DIR EN GREYは海外からも日本のヘヴィロックバンドと認識される様になって行きました。

 

本作品に対するメンバーの反応

 

「VULGAR」に対してメンバーは「DIR EN GREY - DOCUMENTARY OF TOUR 16-17 FROM DEPRESSION TO ________」にて以下の様なコメントをしています。

 

■薫

・バンドがDIR EN GREYに対し、意識を統一させたアルバム。

・今のDIR EN GREYの方向性へ向かい始めたきっかけとなった。

 

■京

・VALUGAまでは衣装の打ち合わせをしなかったが、世界観を統一する為に写真や映

 像でそれぞれで世界観を表現する様になった。

・「MACABRE」の様に作品を魅せつつ、「鬼葬」のライブ感を出していくやり方を

 両立し始めた。

 

■Toshiya

・重心の低いアルバムにするイメージがあり、重く激しい曲を狙っていた。

・今弾いても違和感く、現在のDIR EN GREYにマッチしている。

 

■Shinya

・第二部DIRが始まり、音楽性が変わった。

・自分のドラムが確立された頃。

 

■Die

・今のDIRの音楽性になるまでの大きな転機となったアルバム。

・サウンドの変化が劇的に変わった。当時はラウド系の音に憧れて意識して作成して

 おり、イメージしたものを勢いで作り上げた。

・DIR EN GREIの持つメロディアス部分と、ハードな部分が融合したアルバム。

 

メンバー自身もこのアルバムがバンドの1つの転換期になった事を意識しています。音楽性の変化の中にはプレイヤーとしての技術的な変化も多くあり、これまでの作品以上に試行錯誤がされた作品であると言えます。

 

では、「VULGAR」を構成する楽曲達に視点を当てて見ましょう。

 

1.audience KILLER LOOP

ヘヴィロックを基盤構成された一曲。楽曲全体としては重たいバラード調かつミディアムテンポとなっています。楽曲頭ではゴシックメタルの耽美さからの怒涛のシャウトと重く激しいリフを聞き取る事ができ、VALGARの世界観に一瞬で引き摺り込まれます。

 

歌詩では、人は人を傷つけ合う事で癒されていくという、残酷な事実を歌いあげています。そう考えると、癒されるために自信を傷つける行為も認められるものなのかもしれません。現代社会自体が渦と嘘の世界であるならば、自殺の庭こそが唯一自分を癒してくれる場所なのかもしれませんね。

 

audience KILLER LOOPはライブ時にお客さんも歌いあげる事もでき、バンドとお客さんが一体になれる一曲となっています。

 

2.THE IIID EMPIRE

戦争をテーマにした一曲です。ヘヴィロックを基盤にしているのですが、京さんはラップ調で歌詩を歌っています。重く激しく、軽やかにと言うと変ですが、爆撃の中で歌っている様なイメージです。イントロでは切り裂狩れる様な鋭利なリフからの激しく歪むヘヴィなリフへと進行して行きます。ベースもゴリゴリと楽曲の裏側を支えていながらも存在感を全面に押し出しており、ドラムも手数多く変な一体感のある曲となっています。

 

3.INCREASE BLUE

 

電子音や機械音声が入り混じった疾走感のあるロックナンバー。前2曲ほど重々しくなく、当時のV系っぽい曲と言う印象です。明確ではありませんが若干エログロな内容になっている気がします。

 

4.蝕紅

童謡「かごめかごめ」が元となっています。「かごめかごめ」は様々な解釈のできる歌詞となっており、一説では遊女説もあるとの事。一日中(夜明けの晩に)男性の相手をさせられ(鶴と亀が滑った)、いつここから抜け出せるのだろう(いついつ出やる)と嘆いているうちにもう次の相手の顔(後ろの正面だあれ)が見え隠れしている、という自由のない遊女(籠の中の鳥)の悲哀を表している。(Wikipediaより)

本楽曲の歌詩も遊女の心中を歌い上げている様に感じられます。ヘヴィかつダークにして、力強くも悍ましいデスヴォイス等、多様な歌唱法の使い分けが聴き取れます。「かごめかごめ」の民謡を継いでいるせいか、和テイストが入り混じっており、歌謡曲のテンポ感とラウド感が見事に融合しています。

 

5.砂上の唄

メロディアスで疾走感のある一曲。様々な歌唱法を用いる京さんが全編を通してクリーンボイスで歌い切る、本アルバム中最も人にオススメしやすい一曲です。Dieさんが作った事もあり、ライブ中のDieさんのパフォーマンスは超かっこいいです。歌詩も純粋な別れの詩であり、世界観に入り易く聴きやすい素晴らしい作品です。

こういう一曲を作れるDIR EN GREYだからこそ、ヘヴィでダークな曲を作った際に他のバンドでは生み出せない曲を生み出せるのではないでしょうか。

 

6.RED…[em]

真似したくなるギターリフか始まります。個人的に本アルバムを代表する一曲だと思っており、楽曲のヘヴィさとメロディアス感が見事に融合している王道の一曲です。

京さんの地声が最も美しく勇ましく聞こえるのも本曲の特徴であり、ギターソロ、ベースソロも聞きごたえがあります。

砂上の唄同様にDieさんがメインコンポーザーの様で、DIR EN GREYの持つ美しさが押し出された作品です。

本曲は一人の主人公視点で何かを失った様子が描かれており、世界観に入り浸るのが最高に気持ちいです←

 

7.明日無き幸福、呼笑亡き明日

この曲を聞いた時、何故か初期ガゼットを思い出しました。曜日を歌詞に入れるのはV系の伝統芸になりつつある気がするが最初にやったのはDIRなのかな?

V系特有のクネクネ感とジャズ・ロック(そんなジャンルないかもだけど)が融合した一曲。重すぎず跳ねた様な楽曲となっています。

 

8.MARMALADE CHAINSAW

タイトル名の通りギザギザに刻んだリフが多く凶悪な一曲となっています。それだけでなくベースも動き回っており、脈動感もあります。サビもしっかりしており聴きやすいです。

ライブ中の京さん自身を歌ったものであり時計じかけのオレンジ いう映画の主人公が自分に似ていることからそれと関連した言葉が使われているそうです。ただ、この映画の主人公とどこが京さんと似ているのかは不明です。

ライブではお客さんと一体感を作りやすいものとなっており、俺たちがDIR EN GREYだ!と体現する一曲と言っても過言ではないかもしれません。

 

9.かすみ

シングル曲だった事もあり、メロディアスで非常に聴きやすい一曲です。歌詩からも和テイストが盛り込まれているのがわかり、日本人に共感しやすい悲しさや切なさが盛り込まれています。

 

10.R TO THE CORE

2分弱の短い曲。前曲の流れをぶった切るためにある曲のようで、シャウトとは違うがなり声で歌いきっている曲です。普通の声で歌えば前向きな曲に感じるのでですが、がなり声で歌いきっているので、どうしてこういう歌い方になったんだ?と不思議に思ってしまいます。ただ、これ何かに似てると思ったんですが、セックス・ピストルズの歌い方に似てるんですよね。DIR EN GREY風パンクと思って聞くと非常に聞き応えのある曲です。

 

11.DRAIN AWAY

和テイストのヘヴィ・ロックとラップが融合した名曲。一言で言うとバランスのとれたシングル曲で、PVも楽曲と見事に一致しています。このアルバムの中においては癖の強い楽曲たちに埋もれない比較的ポップの曲となっています。

 

 

12.NEW AGE CULTURE

ヘヴィロックというよりはハードコアと言うんでしょうか、ここまで聞いた曲の中で一番破壊力の波が変わらず終わった一曲と言う感じです。思ったのが、後々DIR EN GREYがハードコアな楽曲を展開する上での礎となった一曲かもしれません。

何も考えずひたすら叫び声に耳を傾けて聞くのが良い一曲です。

 

13.OBSCURE 

とりあえず友達にはオススメしない曲です笑。しかしこのアルバムの名刺がわりになる一曲である事もまた間違いなしです。

ジャパニーズエロ、グロ、怨念、呪い、過激、不気味全てを表現したPVのせいで、曲を聞くだけでその光景が蘇ってしまうほどのインパクトがあります。

NEW AGE CULTUREが王道ハードコアとするならば、OBSCUREはそれらにサビが加わり、生々しさ、残酷さ、美しさがより一層浮き彫りとなった、DIR EN GREYだからこその一曲となっています。

とりあえずPVを見ずにライブ映像を見て欲しいです。そうするとこの曲が世界で通用する曲であることがわかると思います。

 

14.CHILD PREY

今のDIR EN GREYはなかなか作らないであろう曲です。PVも戦闘機乗ってるしこの手のPVはもう確実に作らないと言い切ってもいいくらいです。

しかし、そんな過去の作品も現在のDIR EN GREYが奏でると不思議と違和感がないんです不思議。楽曲としてはお客さんも乗りやすい、疾走感もあって心地よい曲となっています。

 

15.AMBER

本アルバムのトリは意外にも哀愁たっぷりのロックバラードとなっています。アルバム「VULGAR」は静かに冷たい闇に消えいていく・・それほどのインパクトが静かながらもこの楽曲には秘められています。

 

最後に

本作はDIR EN GREYの1つの転換期となったアルバムであり、楽曲たちのバランスもとれた名盤だと思います(そう思っている人も結構多いはず)。

VULGARを聞いた後、DIR EN GREYがどのように進化(深化)を遂げていくのか感じてみると面白いかもしれませんね。

 

それではまた!!

 

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