「競争戦略論Ⅰ」何をやらないかを決めよう
1. トレードオフを見極める事で、強い戦略が生まれる
競争戦略論Ⅰの著者、M・Eポーターは本書において以下のように日本企業を批判しています。
「日本企業は、すべてのものを、すべての顧客へ」と考えて、お互いに模倣しあい競争して、改善するだけだ。日本企業には戦略がない。日本企業は戦略を学ぶべきだ。
本書は1999年の出版ですが、この指摘は現代においても有効ではないかと感じています。
日本の企業は成功するライバル会社を徹底的に分析し、同じ事をうまくやろうとしているように見えますが、ポーターからすればその状況は戦略的ではなく、模倣的に見えているのでしょう。
ポーターは、戦略的に事業を展開するのであればまず「何をやらないか」を考えるべきだと指摘しています。
・どのお客を捨て、どのお客に対応するのか
・どの技術を縮小させ、どの技術を成長させるのか
トレードオフを見極める事で強い戦略となる事を本書では説明しています。
2. 北海道でセブンイレブンを打ち負かすセイコーマート
トレードオフを見極めて事業展開して、北海道内ではあのセブンイレブンをも上回っているのがセイコーマートです。
ここで、セイコーマートがセブンイレブン、その他コンビニと比較し、何をやらずに事業展開をしてきたのかを紹介すると下記の通りです。
- コンビニの基本は都市集中型である。人口密度から考えると当然の戦略ではあるが、セイコーマートは北海道内の中でも地方をターゲットとしている。(都市型展開をしなかった)
- 大手コンビニ3社はいずれも、自社PB商品はメーカに生産委託し、配送は外部配送業社に任せているが、セイコーマートは自社で食品製造を行い配送もしている(外部委託をしなかった)
- セイコーマートは24時間営業をしている店舗が少ない(過度な競争をしない)
- 直営が多い(フランチャイズを活用しない)
セイコーマートでは大手コンビニ3社にあるようなおでんやドーナッツは作っていないそうで、やらない事が他社と比べ明確です。
セコマは「何をやらないか」を決め、トレードオフを見極めた上で、様々な活動を密接に連携させ、北海道でセブンをも上回る存在となりました。
3. 身近に感じる本当に必要なの?と思うものをピックアップしてみよう
事業展開を行う中で戦略的に何をしないかを見極めるのは慎重にならなければなりませんが、例えば形骸的になっているシステムに関しては早いうちに切り捨てていってしまった方がいいかもしれません。
自分が特に不要だと感じるのは、ISO関係のマネジメントシステムです。あれはお金もかかるし労力もかかるのですが、毎年やっていることは変わりありません。
事業の資格要件などに深く関わっていなければさっさとやめてしまえ!と思っていたりします。
会社の中には、自分の評価を高めるため必要でない事をさも重要なことのように語り、無駄な手続きを増やしたがる人がいます。その人たちが作った無駄な慣習やシステムがあれば、早めに止めるよう皆に働きかけましょう。
そういう小さいところからいらないものを見極める練習を行い、事業においてもやらない事を見極められるように慣れればベストだと考えます。