【レビュー・感想】清春「Covers」は大人のためのアルバム
1. 清春「Covers」の総評
アルバム「SOLOIST」が清春さんのポップな部分を強く押し出した集大成だとすると、そこから次の段階へ上るために新たな可能性を打ち出したのが「夜、カルメンの詩集」。そして50歳を前に自身を省みて生まれたのがセルフカバーアルバム「エレジー」であり、今作品は他者の楽曲を自分のスタイルに昇華させて生み出した作品となっています。
黒夢時代のようにアルバムごとに激しく曲調が変わる事は無いですが、出すアルバム毎に意味を持ち、一歩一歩進化を続けているのが良くわかります。
そんな最新アルバムの「Covers」ですが、本アルバムの総評は34点/50点とさせて頂きました。低く見えるかもしれませんが、なんとなく清春さん自身がこれくらいの評価になるように作ったような感じもしております。
選択した楽曲は幅広いですが、清春さんの歌い方やテンポ感を考えると、大人のための曲というのがこのアルバムを聴いた率直な感想です。
2. 本アルバムで聴ける清春の表現力
以前清春さんがXJAPANの紅をカバーしたときにも思ったのですが、清春さんが他の楽曲をカバーする時はとにかくクセが強い!それでも音程を外さずに歌いきるあたりは流石清春さん。
歌の上手いヴォーカリストは沢山いますが、「自分を持っている」あるいは「オリジナリティを確立している」ヴォーカリストは少なく、清春さんは両方兼ね備えている稀有な存在だと改めて認識できるアルバムとなっています。
3. 大人なサウンド
音数の少ない楽曲が多いため、ヴォーカルと同じくらい楽器のサウンドが聞き取れます。ギターの少し歪んだクリーンな音が気持ちよく耳に入って、それだけでゆっくり聴きたいという気持ちにさせてくれます。
4. 選曲
カバーアルバムは自分が若いころに尊敬したミュージシャンや好きな楽曲を歌うものだと思うのですが、清春さんに限ってはそうでもなかったみたいです。
半分くらいはレコード会社の人と話しながら決めたみたいで、幅広い年代層の楽曲が詰まっています。
ただ、個人的にはもっといい曲あったんじゃないの?と思う選曲なので、カバーアルバム第二段を期待しています。
5. PV
本アルバムはPV数が多いのですが、特にやさしいキスをして(ドリカム)のPVは不思議な感覚を受けます。
【清春】「やさしいキスをして」from『Covers』【MV】
このPVを見ていると、この曲は恋愛や努力している人への応変ソングでも、悩んでいる人へのアンサーソングでもない、酸いも甘いも経験して成熟した人のための「今」を感じる楽曲という雰囲気を感じます。
6.音数
「もうバンドをやっている場合じゃない」と本人の言うとおり、音数の少ない、ヴォーカルを聴かせるためのアルバムとなっています。
少し物足りない感じがしますが、早い音楽を聴くのに疲れてきた人には次のステップとして聴いてほしいです。