【レビュー・感想 後編】DIR EN GREY新作 『The Insulated World』楽曲毎の紹介と本作の流れ
画像出典元
http://direngrey.co.jp/discography/
遅くなりましが、後半、楽曲毎の紹介をしていきます。
あくまで個人の主観ですし、歌詩をどう捉えても良いと京さんも言ってくれていますので、許してくださいね。
- 軽蔑と始まり
- Devote My Life
- 人間を被る
- Celebrate Empty Howls
- 詩踏み
- Rubbish Heap
- 赫
- Values of Madness
- Downfall
- Followers
- 谿壑の欲
- 絶縁体
- Ranunculus
- 最後に
軽蔑と始まり
本アルバムでは、京さんの内面から生み出されたものがアルバムとしての世界観やバランスを計算せずにそのまま表現されている という特徴があります。
いくつものツアーを成功させて行く中で、京さんが次に見たものは希望や夢の広がる世界ではなく、暗く閉ざされた世界であり、一曲目である軽蔑と始まりではその世界感をオブラートに包まず表現しています。
自虐的な歌詩となっていますが、自分の価値観や生き方を曲げれない、自分を隠してい生きていく事ができない、そのような人が軽蔑を受けてしまう現実に起こっている短な出来事のように感じます。
3:12 という短い間ではありますが、転調がサビを含め4つ程あり、激しいまま最後まで突っ切る曲となっています。
Devote My Life
軽蔑と始まりが 自身の価値が世間の価値観と違うことによって苦しむ様としたら、こちらの曲では、世間の価値観を受け入れられない自分を卑下し、両親にひたすら謝罪し苦しんでいる様子です。
親に申し訳なく思いながらも自分だけの価値観を求める。命を捧げている。
サビの懺悔の部分では、ギター音とボーカルシャウトが絶妙な絡みをしています。軽蔑と始まりよりも禍々しく狂気な一曲となっています。
人間を被る
前2曲の根幹には自分だけの価値観、世界観が大きく関係しています。その上でこの人間を被るでは、何が正しいのかという問題提起を投げかけています。
この曲はシングル曲でしたが、本アルバムによってより一層存在感を増した一曲となってます。
Celebrate Empty Howls
自身の生き方に対して頑なに違う価値観を押し付けて来る人々がいる。しかし、そんな人間の声は自分には届かない、無駄に吠えているだけに過ぎない。
俺たちは生きている世界も観ている世界も違うのだから、お前の空っぽな叫びなんか聞こえはしない。ただ、俺の考えもお前たちにとっては聞き届くものでもない。正解でもない。どうでもいい。
と、勝手な解釈をしています。
全然関係ないかもしれないんですけでも、この曲からはアルバムDUM の匂いが感じられてしまいました。本アルバムはシンプルさを意識していますが、DUMのように感じるという事は、あの構築されまくった楽曲を5人の力だけで表現できるようになりつつあるという事なのかなと思っております。
詩踏み
この曲がシングルリリースされた時に京さんは、自分たちのファンですら次の瞬間には違うミュージシャンのファンになっていたりと、好きのものが突然興味のないものに変わる というような発言をしていました。
本アルバムでは、偉そうに自分の価値観を押し付けて来るのに、その価値観すら次の瞬間には変化している人々に対する節操の無さを歌っているようにも感じられます。
シングルから少しリミックスが行われているようで、楽曲がよりクリアに聞こえるようになっています。
サビが明確にここだと分かる聞きやすい曲になっています。
Rubbish Heap
この曲から今までの負の楽曲からの分岐点になります。これまでの流れを踏襲しつつ、正義の価値観を押し付ける者たちに対する皮肉と、蹂躙されながらも生きていきたい自身への疑問を歌っているような気がします。
そして自身の他とは異なる価値観を自覚し、その価値観では誰も救う事は出来ないと言いつつも、誰かに届いて欲しい、最後のサビ?の部分ではそう歌っている様な感じがします。
赫
ここでやっとバラード調の曲となります。Rubbish Heap では自身の生への執着を感じつつ、本曲では自分にも1つだけ綺麗なものが残っており、自分を許す事ができた。と歌っています。
愛という言葉がサビでも出てきており、各人の異なる価値観との中で生まれる、最早形のわからない愛という存在が、それでも自分を救ってくれるのだろうかという?という疑問も生じています。
少しだけポジティブになってきています。
Values of Madness
ここでは、生への執着(Rubbish Heap)と自分自身が認められるもの(赫)を胸にだきながら他者への攻撃的な姿勢を示し、それでも誰かと分かり合えることを諦めていない様な歌詞となっています。
ああ、俺は最低だとも、だがお前たちもそれほど変わらないんだぜ? こんな価値の無い世界なんてぶち壊してやりたい。
そう思うが、それでも俺はこの世界を捨てることができない。まだ心の何処かで誰かと分かり合えるんじゃ無いかと信じているからだ。
からすぅにはこの様に聞こえています。
Downfall
曲名は落ちるという事ですが、そもそもDIR EN GREY自体が暗黒の底にいる様なバンドなので、ある意味その逆の急上昇という意味になるのかもしれません。
短い時間の中にひたすらに攻撃的な内容が詰め込まれています。
これは非常にナガティブな内容ながらも前向きに曲です。自身の世界観を破壊しようとして来る価値観を押し付けて来るものに対して、媚びて吠えるんじゃ無い!怒りを思い出せ!闘うんだ!そういう勢いがこの曲には込められている気がします。
Followers
貴方の持つ世界が例えどれほど残酷な世界であっても受け入れます。本曲でややっと他者の為の救いが表現されています。
京さんは雑誌にて、自分の事を本当に理解してくれる人は1000人中1人2人くらいだろうと言っており、この歌はその人たちのために歌っている曲となっています。
谿壑の欲
この曲は難しいです。ここまでの流れだとこのまま希望に向かって突き進むのかと思ったらまた絶望に戻された様な感じ。
もしくはここまでの希望の流れを一度別の場所においておいて、このアルバムの物語の主人公がどの様人物なのか過去に翻り表現しているのか。
いずれにせよ此処までの流れをブチ切るものとなっています。
絶縁体
この世界は結局偽りだらけで上手に偽った者が幸せを掴んでいる。であればそれが出来ないものは生きているだけの価値の無いものとなってしまう。
自分とは別の世界、それを見なければ自分のままで入られるのに。
Ranunculus
本アルバムのラスト曲。このアルバムの行き着く先。
うまく生きるためじゃ無い。誰かのために生きるんじゃ無い。この隔離された世界で、例え人から無価値の存在だと思われても、私はここで叫び、そして生きている。
人間を被るで問題提起された 何が正しいのか? その答えは誰にも分からないがそれでも生きていく!そう行った力強さを感じます。
このアルバムが最後に光の元へ進んで行った瞬間です。
最後に
本作は楽曲時間が短く、あっという間に終わってしまう様に感じられますが、非常に物語性を感じる内容となっていました。
そしてどの部分が詩のメインなのだろう?と悩むことが多く咀嚼しきれなかったのですが、本ブログに記した様な感じでまとめることとなりました。
毎回アルバム毎に性質が異なるため、DIR EN GREYはこうやって聞けばいいんだろ~という事ができませんが、それが彼らの魅力でもあり、根幹にある痛みというテーマはブレていませんので、次の作品も気になってしまうのです。
ご意見等ありましたらコメント欄によろしくお願いします。